読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

-1錠飲めば記憶を一日飛ばす薬、あなたは飲みますか?-  一巻完結の漫画アイリウムが面白かった

1錠飲めば1日分の記憶を飛ばすことができる薬、アイリウム。薬が効きはじめると、他人から見れば意識もあり普段通りの生活をしているように見えて、その間の記憶がまったくなくなってしまう。つまり、嫌な思いをする出来事の前に飲んでおけば、その事を思い出すことなく日常生活が送れるのだ。記憶を薬でコントロールできるようになった時、その人の生はどんな彩りになるのか…。

コミックシーモアの懸賞で1000円分のポイントが当たったので、ショッピングに来た女子よろしく悩んだ結果、一巻完結の本を2冊買うことにした。

記念すべき一冊には、尼のレビューが結構高いアイリウムを選んでみた!

アイリウム

アイリウム

 

 

一言で感想を言っちゃうと、これはもう尼の高評価通りの傑作だった。

この本は、飲んだ人の記憶を飛ばすことが出来る薬「アイリウム」が普及した世界で生きる、それぞれの主人公を描いた短編形式になっている。

映画監督を目指す青年・医者・主婦にホストに軍人といった年齢も職業もバラバラで、色んな立場の人間像が見れたのも良かった。

主人公一人で複数巻続く長編ストーリーも面白いと思うけど、世界観が一つに固定されちゃうから個人的には短編形式なのはgood。

 

映画監督を目指す青年の話は、主人公の苦悩に感情移入してしまって見るのが辛かった。

「いつまで俺は努力すればいいんだ?一体いつ報われるんだ?」

夢は叶えられなければ辛いだけとは良く言ったもので。

彼はこの辛さから逃れるためにアイリウムを飲んでしまうんだけど、

友人や親への負い目とか、今後の人生を考えたら多分自分も飲むんじゃないかなぁ。

「とにかく明日の自分にこのバトンを押し付けてしまおう」ってね。

 

f:id:hagoromox:20150222201052p:plain

この後彼はアイリウムのオーバードーズ(大量摂取)で10年以上先の未来に行っちゃうんだけど、その未来もまた本人にとっては複雑な未来で・・・

この先は自身の目で確かめてほしい。

 

他の話だと、アイリウムで記憶を飛ばして本音を暴露しあう主婦達の話と

f:id:hagoromox:20150222201051p:plain

現実が辛くてもアイリウムを「飲まない」医師の話が好き。

f:id:hagoromox:20150222201047p:plain

誰だって面と向かって言い辛いことがあるけど、溜めておくのは体に毒。

どうせ記憶飛んじゃうんだから良いじゃん?っていうノリなんだろうか。

終始昼ドラのようなドロドロ感が漂っていてリアルだった。

聞いた限りだと、リアルでも夫の収入や地位で上下関係が出来たり、ブランド物のバッグについつい嫉妬しちゃったりすることもあるらしい、「ママ友」こわい。

恐怖! 女の嫉妬が招いたママ友トラブル5つの事例|Amebaクラチエ

 

アイリウムを飲まない女性医師の話は、本作品を根底から考えさせられる一品。

元々アイリウムは医薬品の一種で、PTSDや治療の苦痛を和らげるために開発された。

苦痛っていうのは「痛い」とか「辛い」といった脳の記憶そのものであって、その記憶を無くすことで苦しみから開放されるっていう寸法なんだろうか。

でもやっぱり。読んでくうちにアイリウムの意義について考えざるを得ない。

「忘れる」ことが本当に救いになるんだろうか?

どれだけ記憶を飛ばしても現実は存在する、将来の不安は消えない。

辛い記憶を消すには、それでも現実に立ち向かうことなんだろうか・・・と考えさせられる。

f:id:hagoromox:20150222201049p:plain

もちろん、人には残したくない記憶もある。それでも、自分の人生を形作っているのは自分の記憶以外に無いんじゃないかなとも思う。

「私は私の記憶の中でしか生きることができない」とは女性医師の言葉だけど、真理なのかなーと。

もしもアイリウムが現実にあったらどうなるんだろう。

少なくとも自分は、飲まないように生きたいね!

救いとは何か (筑摩選書)

救いとは何か (筑摩選書)